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Dr. Abekoの免疫学講座+α

アメリカでT細胞の研究してる皮膚科医の免疫学講座

サルでもわかる免疫学講座~T細胞の基本のき~その0

T細胞の勉強でつまずいている人へ

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『免疫の授業でT細胞を習ったんだけど、ところで、CD分類(CD3、CD4、CD8など)って何なんだろうか。一体何者なのかを知りたい。名前が似てるから、機能も似てるのかな?』

 

 

こういった疑問に答えます。

 

一般向けよりは医学生、看護学生、またはT細胞を学びなおしたい人向けになっています。

 

 

 

本講義の内容

『CD分類』が何者なのかわかる。

 

 

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1. CD分類は何をしているの?

CD分類(シーディーぶんるい):Cluster of differentiation

 

直訳すると「分化抗原群」

Wikipediaでは「ヒト白血球を主としたさまざまな細胞表面に存在する分子(表面抗原)に結合するモノクローナル抗体の国際分類」

 

CD分類は簡単にいうと、

 

細胞の表面に発現している“抗原”の名称で、

つまり『細胞の名札』である。

 

(昔は白血球の区別するための名称であったが、現在はCD分類の使用は白血球に限定してはいない。)

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たとえば、

CD3が付いていたら、T細胞。

CD20が付いていたら、B細胞。

 

 

さらに、組み合わせでその細胞がどんな細胞かがわかる。

CD3にCD4が付いていたらCD4陽性T細胞。

CD3にCD8が付いていたらCD8陽性T細胞。

 

 

さらに、さらに

CD3にCD4にCD25が付いていたら制御性T細胞。

 

(雑談:このほかにもCD4陽性T細胞は沢山種類があるのですが、かの有名なHIVウイルスは、CD4陽性T細胞に感染するウイルスです。T細胞の中のCD4陽性T細胞に感染して、免疫を下げてしまうんですね。)

 

 

CDの組み合わせで、細胞が特定できるのです。

 

 

2.CD抗原には機能はあるの?

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機能のあるCD抗原もあれば、ないものもあります。

 

とある抗原に

『名札となる資格があるかどうか』を、

国際的に考えられたのちに、

 

「この抗原にCD●●という名前をつけよう」

と決定するのです。

CD番号というあだ名は「あと付け」なんです。 

 

 

だから、

「IL-2レセプター」→「CD25」

(レセプター:ある分子の信号をキャッチする分子)

 

 

「αEカドヘリン」→「CD103」

(カドヘリン:細胞接着をつかさどる分子)

 

と、名称を変更・追加がされました。

 

このように、機能が解明された分子に、

CD番号をつけることがあります。

 

現在はCD1~CD300以上まで命名されています。

 

CD○○と名前が似ているからといって

お互い似た分子構造を持つわけではないです。

 

よってどんな働きをする抗原かは

そのCD抗原によってそれぞれ異なります。

 

 

 

3.CD番号が必要な理由

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CD番号が必要な理由はあります。

それは全世界的に名前を統一するためです。

 

 

1つ1つの細胞にはそれぞれの役割があり、

色んなものを身に着けている。

武器や防具を持っている。

 

その装備のことを細胞の抗原と呼び、

同じ武器なのに、

人によっては刀と呼び、

人によっては剣と呼び、

人によってはソードと呼ぶ。

 

 

抗原には複数の名前が存在することがあり、

その抗原の名前を国際的に統一して分類したものが、

このCD分類というわけです。

 

 

 

■まとめ

  • CD番号は細胞の名札である
  • CD番号の組み合わせで細胞が何者であるか識別可能
  • CD抗原には、別の呼び名を持っている場合がある
  • CD抗原に機能があるかはその抗原による。

注)当記事では「CD番号」を”名称”として、「CD抗原」を”タンパク”として使用しています。それぞれの単語に、特別に明確な違いがあるわけではないです。