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Dr. Abekoの免疫学講座+α

アメリカでT細胞の研究してる皮膚科医の免疫学講座

Toll-like receptor (TLR) : Toll様受容体(1)

Toll-like Receptor (TLR) 

このTollはこのスペルです。『背が高い』の『Tall』じゃないので注意です。

 

このTLRは主に樹状細胞やマクロファージといった細胞の細胞膜や細胞内に発現しているんですが、

 

『Toll-like Receptorとはいったい何ですか?』

 

と聞かれたら、どうやって答えますか?

 

ドクターでもこれを説明できる人は少ないんじゃないかな?

一言でいえば、『自然免疫細胞用の敵判別機』です。

分かりづらいか (笑)

自然免疫細胞なのに、TLRが敵を何者であるか判別するんです。

 

普通そうに聞こえますよね?

でもこれは昔は普通ではなかったのです!!!

だから重要なんです。歴史がかわったから。

 

 

現在皮膚科領域ではTLRアゴニストのベセルナクリームが、尖圭コンジローマ治療薬、日光角化症治療薬の治療薬として発売されてますね。これはTLRの発見があったからこそのたまものです。

 

 

 

ちなみに下の図はToll-like Receptor(TLR)ですが、何が書いてあるのかはっきり言って分からないです。

 

 

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ごちゃごちゃしててわからん!

ごちゃごちゃしすぎだろ。

 

■自然免疫の歴史

なぜ、Toll-like receptor が注目されたのか。

どうして、大事なのか。

先ほどいったように、免疫学の歴史が変わった瞬間があったのです。

 

それは、僕が医学生だった時に習った自然免疫の定義は、『自分(自己)以外のすべての異物に対する免疫』と習いました。

 

自然免疫を行う細胞は『私の細胞以外の全ての異物』に対し免疫が働き、

 

その異物が菌やウイルスだった場合、

 

菌やウイルスなどをやっつけた時に初めて『認識』し、そしてそのあとに獲得免疫という上質な免疫細胞が出来上がる。

 

つまり、一度も出会ったことないウイルスや菌に関しては一切認識することができない、と思われていたんですよね。

 

■自然免疫の考えが変わった

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考え方が変遷してきている

しかし、現在の免疫のベースは自然免疫

獲得免疫は応答を早くするためのサポート的存在になった。

(わたしが学生だった時は左のように習いました 泣)

 

■自然免疫細胞のアンテナ

 

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これが今の自然免疫の考え方

そう、左の図が昔習ったときの図

 

(左の図)バリアを破って体内に入ってきた異物すべてを食べる図

(右の図)バリアを破って体内に入ってきて『何者かを認識して』から食べる図

 

自然免疫細胞(樹状細胞やマクロファージ)も『相手が何者なのか 』判別できるんです。もちろん細かく知ってるわけではないです。でも、真菌(かび)なのか、細菌なのか、ウイルスなのか判別して貪食しているのです。

 

■Tollとは

Toll に似てるから、Toll like Receptor.

で、『Tollとは?』

 

それは獲得免疫を持たない自然免疫しか持っていないショウジョウバエで見つかったReceptorなんですね。

 

再三言ってきたように、今までは自然免疫は全ての異物に対する免疫だと思っていたのですが、Tollを強制的に発現抑制したら、ショウジョウバエにカビが生えた論文がCellに掲載され、世界中が驚いたのです。

 

 

 

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Toll Receptor に似てるからToll like Receptor

Tollを介して抗真菌ペプチドを発現させて、カビ対策していたんですね、ショウジョウバエは。しかし、Tollがなくなるとカビが生えて、死んでしまった。

自然免疫が『すべての異物に対する免疫』ではなく、

遺伝子的に自然免疫は、カビをカビと認識して倒している、ということが分かりました。

 

その後、人間にも同様のReceptorがあることが分かり、それをToll like Receptorと名付けたそうです。

 

■まとめ

 

  • 自然免疫も敵をToll like Receptorを認識してやっつけている

 

以上